草間彌生《南瓜》舞鶴公園 「福岡城まるごとミュージアム」にて |
2018年もあと少し。
自分の【鑑賞記録】を振り返っている。
ホントによく行ったな、と思う。
そこで。
個人的に印象に残る展覧会を記録したい。
ブログ開設当初から地元の美術を記憶にとどめるような記事が書きたいと思ってきた。
もちろん、行けなかった展示も数多くある。
手短ではあるが、今回は2018年1月から11月に福岡県内で開催された9つの展覧会を取り上げる。
優越はつけられないので会期順に書きます。
後半に少し写真も載せてます。
GOGGLES GAZE GARBAGE GARBAGE !!
2018年1月25日~1月28日[IAF SHOP*]
書家ハシグチリンタロウさんの展覧会。お名前はよく拝見していたが個展にお邪魔したのは初めてで、幸いご本人にも会うことができた。気持ちのいいくらいクールな展示だった。一筆一筆から命がほとばしっている。紙からはみ出しまくっている。何と書かれているのか分からなくても全然気にならない。現在同会場で開催中の個展(2018年12月6日~16日)も楽しみ。
http://iafshop.tumblr.com/post/169775617898/goggles-gaze-garbage-garbage
(IAF SHOP*より)
密やかな部屋 ―きらめく昆虫標本―
WORLD OF INSECT SPECIMENS
2018年1月20日~3月11日[三菱地所アルティアム]
九州大学総合研究博物館がコレクションする昆虫標本の展覧会。以前その博物館で、生きたままの幼虫が展示されていて仰天した(←イモムシ系が苦手)経験があり、正直行くか迷ったのだけれどコレが非常に面白かった。見る方向によって色とりどりに変わる蝶やコガネムシ。個体によって模様や光沢もひとつひとつ異なる。美しい。同大学の使いこまれた家具も素晴らしかった。
http://artium.jp/exhibition/2018/17-08-insect-specimens/
(三菱地所アルティアムより)
太宰府天満宮アートプログラムvol.10
ピエール・ユイグ「ソトタマシイ」
Pierre Huyghe 'EXOMIND'
2017年11月26日~2018年5月6日[太宰府天満宮]
天気に恵まれ暖かく、境内中の梅が満開だったことを覚えている。「作品の性質上、天候によっては公開中止」とのことで、天気予報とにらめっこして訪問日を決めた。会場は本殿裏のお茶屋エリアから少し入ったところで、辿り着くまでもドキドキ感もいい。橙の木と巣を行き来するミツバチ、ウーパールーパーが潜む池。生き物や自然界の循環、ヒトもその一部に過ぎず、抗うことのできない営みがあることを優しく肯定的に提示する作品。人工的に作り出された空間なのにそれを感じさせない深いインスタレーションだった。期間限定ではあるが現在も観ることができる。
http://dazaifutenmangu.or.jp/info/detail/576
(太宰府天満宮より)
福岡城まるごとミュージアム
2018年3月30日~4月8日[舞鶴公園、福岡城跡]
毎年開催される『福岡城さくらまつり』に合わせて福岡市内の複数の公立美術館が企画に携わった展覧会。現在休館中の福岡市美術館(2019年3月21日リニューアルオープン)が所蔵する草間彌生の《南瓜》も久しぶりにお目見えした。そのほか藤浩志の《トイザウルス》や、『博多ライトアップウォーク2017』で注目を集めたスーザン・ヴィクターなど。花見客で賑わっていたこともあり会場中が幸福感に満ち、とっても楽しかった。秋に開催された『博多旧市街まるごとミュージアム』は残念ながら見逃したが、こういう企画はどんどんやってほしい。
http://www.ffac.or.jp/news/detail269.html
(福岡市文化芸術振興財団より)
櫻木雅美 写真展 「あまねし粒」
2018年4月21日~5月1日[gallery wabi]
gallery wabiの企画で開催された写真家 櫻木雅美さんのモノクローム写真の展覧会。グループ展などでは何度か拝見していたが個展は初めて。美しかった。湿った空気に包まれた草原。満開の花をたくわえた力強い桜の木。その写真の目の前に立つと、モノクロなのに季節や空気感が色鮮やかによみがえる。櫻木さんの視点で切り取られた風景たちに吸い込まれそうだった。
https://ameblo.jp/yumewabi0303/entry-12367108909.html
(gallery wabiより)
YABU or trene Exhibition 2018
2018年04月27日~05月27日[TAGSTÅ GALLERY]
柳橋連合市場そばのギャラリーを併設したエスプレッソスタンドTAGSTÅ(タグスタ)で開催された画家 薮直樹さんの個展。実を言うと薮さんのことはまったく存じ上げなかった。フライヤーを見て、いいな、と思い会場のIntagramだけを頼りに行った。抽象画で、1点1点の色彩に広がる感覚があり、深く、美しい。画面の上で試行錯誤を繰り返し、何十枚も何百枚も描いて培われた構図や配色だ。もう一度あの空間に身を置き、浸りたい。
http://tagsta.in/event/1732/
(TAGSTÅより)
森山安英 解体と再生 Decomposition & Recomposition
2018年5月19日~7月1日[北九州市立美術館 本館]
前衛グループ「集団蜘蛛」のメンバーで、現在も北九州市で活躍する森山安英さんの展覧会。北九州の現代美術談では必ず登場する「集団蜘蛛」だが、福岡市在住の筆者は関わった作家が大きく取り上げられた展示をこれまで観たことがなかった。会場は時系列順ではなく、作家が過激な芸術表現から離れた後の作品群から始まる。作家の内側に少しずつ触れ、その変化を垣間見、想像し、共感する。長い年月を経て、過去も、現在も、ありのままを受け入れる作家の姿に不思議と心が満たされた。
http://artscape.jp/exhibition/pickup/10145658_1997.html
(美術館・アート情報 artscapeより)
山下耕平展
2018年10月30日~11月11日[ギャラリーとわーる]
2017年、三菱地所アルティアムの『Local Prospects 3 原初の感覚』の選出作家でもある山下耕平さんの個展。2018年夏に大川市立清力美術館で開催された個展を見逃したこともあり最終日に駆け込んだ。山下さんの作品は楽しい。いつ来ても、期待以上にフライヤーから読み取れるイメージを鮮やかに裏切ってくれる。今回は"顔"に焦点を絞り、その顔の中のパーツを置き替えて再構成を試みた平面作品。あの発想は一体どこからやってくるんだろう。山下さん自身の解説を伺いながら、すっかり気持ちが高揚してしまった。
闇に刻む光 アジアの木版画運動1930s-2010s
2018年11月23日~2019年1月20日[福岡アジア美術館]
最後に現在開催中のこの展覧会(以下、『アジアの木版画運動展』)について触れたい。
浮世絵でもそうだが、版画は小さい作品が多いので、10ある章立てを見ても相当な点数だと予想し、時間に余裕を持って出かけた。じっくり観たい人は関連イベントもチェックしつつ、2回くらいに分けて行くことをお勧めする。また、事前にフライヤーの「展覧会構成」を読んでおくとペース配分に役立つと思う。
知らないことがいっぱい出てくる。すさまじい情報量だ。美術関係者や研究者、日ごろから頻繫に美術展へ訪れる人にとってはかなり刺激的だと思う。
その反面、この展覧会は非常に分かりやすい、とも思う。なぜならそのほとんどが、何が描かれているが一目で分かるからだ。「彫って刷るソーシャル・メディア」というキャッチコピーの意味がようやく観て分かった。戦争、公害、民主化運動。その時代の、その地域の、人々の息づかいが聞こえる。
抽象画のように「一体コレは何だろう」と作品の前で腕を組み、口をへの字に曲げる必要はない。目に留まったら解説を見る、くらいでも全然構わないと思う(そういうみかたは、たまに美術館に行く人の方が長けている)。実際、作品に付随する資料展示も多いから、それらが「観たい」「知りたい」気持ちを助けてくれる。
以前観た『サンシャワー展(東京展)』では、鑑賞者の内側に何となく存在する東南アジアのイメージに対する配慮を感じたが、この展覧会はそんな人も、また美術鑑賞の玄人(?)も、どちらも充分に楽しめる仕掛けが二重にも三重にも、いや幾重にもある。筆者はもう一度足を運び、その仕掛けにはめられたい。
https://asiawoodcut.wordpress.com/
(展覧会特設サイト)
ここから下は写真です(一部の展覧会)。
最後に一部撮影が可能だった『アジアの木版画運動展』の展示風景画像が1枚あります。
巡回展(アーツ前橋)も含め、初めての鑑賞を楽しみにしている方がいらしたら6枚目の写真までで。
GOGGLES GAZE GARBAGE GARBAGE !!(IAF SHOP*)展示風景、一部
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密やかな部屋 ―きらめく昆虫標本―
WORLD OF INSECT SPECIMENS(三菱地所アルティアム)
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密やかな部屋 ―きらめく昆虫標本―
WORLD OF INSECT SPECIMENS(部分)
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太宰府天満宮アートプログラムvol.10
ピエール・ユイグ「ソトタマシイ」(展示風景、一部)
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藤浩志《トイザウルス》展示風景、一部
福岡城まるごとミュージアム
糸島芸農2018(10月)の「うみかえる」での展示も刺激的でした。
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櫻木雅美 写真展 「あまねし粒」(gallery wabi)展示風景、部分
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この下に『アジアの木版画運動展』の画像があります。
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闇に刻む光 アジアの木版画運動1930s-2010s(福岡アジア美術館)
「会場入口」「8章」「9章」「10章」「エピローグ」は撮影OKでした。
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*2018年の【鑑賞記録】*
[1月][2月][3月]
[4月][5月][6月]
[7月][8月][9月]
[10月][11月][12月]
*2018年のそのほかの記事*
東京と福岡、ふたつの『サンシャワー:東南アジアの現代美術展』
https://otomeetsart.blogspot.com/2018/01/sunshower.html
(1月10日 公開)
「ピピロッティ・リスト 初期のビデオ作品」展(北九州)に行ってきました
https://otomeetsart.blogspot.com/2018/02/pipilottirist.html
(2月10日 公開)
地方の展覧会情報、どうやって探してる?~福岡(九州)版~
https://otomeetsart.blogspot.com/2018/04/fukuoka-art.html
(4月25日 公開)
インターネット・VR・AIでこれからの美術館はどうなる?
https://otomeetsart.blogspot.com/2018/06/talkevents.html
(6月25日 公開)
広島県と岡山県で現代アートを観てきました<前半>
https://otomeetsart.blogspot.com/2018/09/summer-vacation1.html
広島市現代美術館について書きました。
(9月20日 公開)
広島県と岡山県で現代アートを観てきました<後半>
https://otomeetsart.blogspot.com/2018/09/summer-vacation2.html
クシノテラスとS-HOUSE Museumについて書きました。
(9月25日 公開)
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最終更新:2019年1月