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2018/06/25

インターネット・VR・AIでこれからの美術館はどうなる?

福岡市博物館 正面入口
(入口の彫刻作品は4点ともアントワーヌ・ブールデル)

6月半ば、2つのトークイベントに行ってきました。


カクシンVol.3
~福岡流!博物館&美術館の愛され方って?~

 2018年6月15日(金)
 天神イムズ10F セミナールームにて
 https://www.facebook.com/events/1487711524665979/
 (以下、カクシン)


現代美術センターCCA北九州
市民美術大学 特別講座「美術界の話をしよう」

 2018年6月16日(土)
 西日本工業大学 小倉キャンパス 大講義室にて
 (リバーウォーク北九州内)
 https://www.ksrp.or.jp/news/archives/2018/05-003710.html
 (以下、CCA)



どちらもお題は「美術館・博物館」について語るというもの。

でも登壇者とその構成がまったく違っていて、カクシンは学芸員ではないけれど地元の美術館・博物館の職員の方やプランナーなど。
一方CCAは、首都圏の美術館や美術大学で館長や学長を務める人、国の文化機関で展覧会を企画する方など。

いずれも各登壇者の自己紹介から、企画に関わった過去の展覧会や、各人が従事する文化施設が抱える問題などから議論が展開していった。

双方ともモデレーターがこういうイベントに慣れているからか、あるいは登壇者との信頼関係がきちんと築けているからか、話の流れという面でもとても聞きやすかった。

個々の細かい内容は割愛するが大変興味深かったのは、このふたつのトークイベント、後半でまったく同じ話題に行きついた。

それは、

『インターネット・VR・AIでこれからの美術館はどうなる?』

というもの。

現地に行かなくてもネットで何でも見られる社会。
SNSで際限なく拡散される画像や動画。
膨大な情報から人が思いもつかない答えを提示するAI。

首都圏からお越しの方の中は、「なくなっちゃうかもね」とあっさり言い放ち笑いを誘う場面もあれば、「同時代の美術を扱う“現代”と名の付く美術館は劇的な変更を余儀なくされるのでは?」と危惧する登壇者もいた。また、AIについては「ジャパンサーチ(仮称)」という国立国会図書館の取り組みが紹介された。

一方カクシンは、「コピペしにくい、再現性の低い生(なま)のものを展覧会で見せる」「その場でしか体験できないライブ感が強い催しを開く」「運営や展覧会の企画に美術館・博物館以外の人間を積極的に取り込む、関わりたいと思う人は絶対にいる」など、集客に繋げるアイディアが尽きないようだった。その一例として、オーストリアのリンツで毎年開催される「アルス・エレクトロニカ」の参加型イベントが挙げられた。

やっぱり福岡の人は、熱い。



それからもうひとつ。

CCAでは質疑応答も設けられており、せっかくの機会なので筆者は「東京2020オリンピック・パラリンピック(以下、オリパラ)」と「リーディング・ミュージアム(先進美術館)」について質問した。

オリパラは登壇者にオリパラの文化・教育委員会の委員を務める方がおり、ちょうど7月にプレス発表があるとのこと。
また、オリパラ開催を見据えてまもなくパリで始まる「ジャポニズム2018」のことをその概要や規模の大きさなどについて、国の文化機関の方が話して下さった。

一方「リーディング・ミュージアム」についてはコメントを断られた。
「それについては話したくない」と言われたのだ。
正直、動揺した。

その3日後に、全国美術館会議から「美術館と美術市場との関係について」という声明が発表されたことをネットの記事で知った。
そこにははっきりと「先進美術館」の文言が入っており、なんか偶然に思えなくて、しばらくこのふたつの出来事について考え込んでしまった。



そんなことがあって、筆者はただのいち鑑賞者だけれど、やっぱり美術館や博物館はあらゆる人に開かれた場であってほしいなあ、とぼんやりと感じた。

大人にも、子どもにも、海外の方にも、病気や障がいを抱える人にも。

そういう場所であり続けてほしいと思う。






*今回参考にさせていただいたウェブサイトなど*


福岡市博物館 正面入口の彫刻作品について
 http://museum.city.fukuoka.jp/about/
(「福岡市博物館」より)


現代美術センターCCA北九州
 http://cca-kitakyushu.org/


ジャパンサーチ(仮称)
 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/digitalarchive_kyougikai/jitumu/dai4/siryou3_1.pdf
(「首相官邸」より、pdfファイル)


全国美術館会議 第48回情報・資料研究部会会合報告
3.「ジャパンサーチ(仮称)」構想について

 https://www.zenbi.jp/data_list.php?g=87&d=104
(「全国美術館会議」より)


アルス・エレクトロニカ
 https://www.aec.at/about/jp/


ジャポニズム2018
 https://www.jpf.go.jp/j/about/area/japonismes/
(「国際交流基金」より)


全国美術館会議が「美術館と美術市場との関係について」声明を発表。
「美術館は市場関与目的の活動をすべきでない」

 https://bijutsutecho.com/news/16923/
(ウェブ版「美術手帖」より)


リーディング・ミュージアム構想を受け、全国美術館会議が異例の声明文を発表
 http://www.art-annual.jp/news-exhibition/news/71672/
(「アートアニュアルオンライン」より)






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最終更新:2018年6月