松末天満宮 展望スペースより |
のんびり下道で約2時間。
はじめて車で糸島に行ってきました。
目的は、今回が3回目の開催となる糸島国際芸術祭2016 糸島芸農(以下、糸島芸農)です。
その中でも、ついつい長居してしまったのが藤浩志(ふじひろし)さんの≪うみかえる≫。
今回はその≪うみかえる≫について書きたいと思います。
藤浩志さん ≪うみかえる≫ |
訪れたのは、お天気に恵まれた秋風が心地よい10月の末。
途中コンビニで道を確認したり、渋滞に巻き込まれたり。
12時半頃ようやくたどり着きました。
どの会場に行っても目印になるのがこののぼり。
オレンジのゾウさんがいらっしゃるこちらの玄関からお邪魔します。
床に白チョークで、
『うみかえるは 表現の場として いろいろな人に 使ってもらえます。なにつかう~?』
…と書いてあります。むむむっ、鑑賞早々大きな問いが。
案内役は代表作のひとつである≪やせ犬≫くんたち。
もともとは80年以上前に建てられたとある会社の別荘。
それを藤さんが2009年に譲り受け、時間をかけて少しずつ使える状態にしていったんだそうです。
薪ストーブがある広間に散らばるたくさんの裏返されたCD。
奥には会場名にもなっているカエルの群れが、そろってこちらを向いています。
会場スタッフの方が「良かったらちょっと遊んでいきませんか~?」とおっしゃるので…。
言われるがままにCDを選んで…
立ち位置を確認し…
かまえて…
投げました。笑。
投げ方は自由だと伺ったので手裏剣みたいに。
(写真をいっぱい撮ってくれたMさん、本当にありがとう!!)
ひととおり遊んだあとは、お二階へ。
≪うみかえる≫では地元で採れたお野菜を直売する催しや、映画上映会なども開かれ、アート関連にとどまらず地元の方のつどいの場にもなっているようです。
おや、会場はココ以外にもあるみたい。
行ってみます。
ん?もしかして、おうち?
階段をのぼると≪やせ犬≫くん。
はじめまして、こんにちは。
上がってもいい?
本当におうちでした。
藤さんの福岡のおうち。
そして、この会場にはいろんな地球儀が置いてあります。
(≪うみかえる≫で撮った写真の中にも地球儀があるよ。探してみてね)
今度は猫ちゃん、こんにちは。
おうちの方に許可をいただいてパチリ。
…と、この辺まではお利口さんだったんですが。
いざ筆者がウロウロし始めると、猛烈に営業活動(?)を仕掛けてくる猫ちゃん(大福くん、1歳♂)。カメラを向けるとなかなかに凛々しい表情をなさる。私、作品を観に来たんだけどなぁ...。大福くんの積極的なおもてなしに甘えていると「今日は良かったねー。たくさん遊んでくれる人が来てくれて」と、おうちの人。
大きな窓から一望できる筑前深江の海水浴場。
とっても素敵なオーシャンビューです。
Fuji Studio(フジ スタジオ)は、2007年に更地の状態で藤さんが土地の権利を持つことになり、2012年にこの建物が完成。おうちの中にはアートプロジェクト「かえっこ」でココへやってきたぬいぐるみもその一部になっています。
*「かえっこ」については、こちら。
気が付くと、時刻は14時。
犬に猫、カエルに手裏剣(CD)...
あっと言う間に時間が過ぎてしまいました。
福岡におうちがある藤さんですが、振り返ってみると、実は筆者はこれまであまり藤さんの作品を観たことがないのです。唯一きちんと観たと言えるのは、おそらく2012年にアーツ千代田3331(以下、3331)で開催された個展「藤浩志の美術展 セントラルかえるステーション ~なぜこんなにおもちゃが集まるのか?~」だと思います。
「藤浩志の美術展 セントラルかえるステーション ~なぜこんなにおもちゃが集まるのか?~」
3331 Arts Chiyoda
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東京に行く用事ができて、合間に行ける展覧会を探して来た時、真っ先に行きたい候補に上げたのが藤さんの個展でした。
「藤浩志の美術展」 3331 Arts Chiyoda
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「藤浩志の美術展」 3331 Arts Chiyoda |
おもな展示作品は、アートプロジェクト「かえっこ」を通して、藤さんが集めた膨大な数のおもちゃを用いたインスタレーション。おそらく一度は持ち主が手放して要らないもの、「ゴミ」になったぬいぐるみやプラスチックのキャラクター商品。でも、筆者には「ゴミ」には見えませんでした。まだまだ使えて可愛らしくて、たくさんあるからより一層カラフルで。子供の頃に夢中になったTV番組や、当時、自分の目に映った情景なども連動して記憶がよみがえり、心からわくわくしたのを覚えています。
そして今回、糸島芸農で訪れた≪うみかえる≫とFuji Studioこそ、「かえっこ」の事務局であり、配送センターでもあり、大量のおもちゃたちが最初に集められた場所なのです。
ココにやってきたおもちゃたちは、国内外を問わずさまざまな地域へ運ばれ、多くの人の目に触れます。あるものは新しい持ち主に引き取られ、またあるものは≪うみかえる≫に帰ってきて、再びほかの土地へ旅に出る。
これまで藤浩志さんというと、その表現の多様さや、制作段階から多くの人が関わり、完成後も鑑賞者によって作品が変容するという側面などから、作品そのものに込められたメッセージが正直「捉えづらい」と感じていた筆者。しかし今回、≪うみかえる≫とFuji Studioを実際に心と身体で体感して、プロジェクトや作品にしばしば登場する「かえる」と言うキーワードに、自分なりにたどり着けたような気がします。替える、帰る、変える、還る。
*福岡県内の美術館にある藤さんの作品*
(展示予定などは各美術館にお問い合わせください)
福岡市美術館 ≪Skinny dogs 戦闘機を引くヤセ犬≫ 1988年(2019年3月21日リニューアルオープン)
福岡アジア美術館 ≪お米のカエル墓石となる≫ 1994年
北九州市立美術館 ≪ヤセ犬の散歩≫ 1987-96年
さてさて。
さすがにのんびりし過ぎました。
最後にこの日のお昼ごはん。
Bakery SANA 糸島 |
やってきたのは、Bakery SANA(ベーカリーサナ)というパン屋さん。このあと引き続き糸島芸農をまわる予定だったので、他の会場までにあるオススメ店を≪うみかえる≫の方に教えてもらいました。
注文したのは、
オレンジ&ジンジャーベーグル 190円
いきさん牧場のハム&チーズ(クリームチーズ) 250円
オートミールスティック 100円
ベーグルとチーズの種類は選べたよ。
ベーグルはその場で軽くトーストしてくれるよ。
ベーグルもチーズも、天然素材のお味しっかり。
思ってたよりもボリューミー。
スティックはおみやげになりました。
*参考にさせていただいたおもなウェブサイト*
Fuji, Hroshi Information http://www.geco.jp/
Report 藤浩志企画制作室 http://geco.exblog.jp/
かえっこ http://kaekko.exblog.jp/
神戸学校(フェリシモ)で開催された講演(2006年3月25日)より
「キラリと輝く表現の瞬間ー違和感から始まる表現と活動について」
http://www.kobegakkou-blog.com/blog/2006/03/post-b7a2.html
シンガポールのビジネス情報サイト AsiaX(アジエックス)より
シンガポール国立博物館「マサマサ・2016」に藤浩志さんの「トイザウルス」
http://www.asiax.biz/event/38363/
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2016年10月の記録
1日 九州産業大学美術館
「美の鼓動・九州」クリエイター・アーカイブ
6日 福岡アジア美術館
「アートでつながる―東南アジアの美術グループ」
会期:2016年12月25日まで開催
15日 九州大学 箱崎キャンパス 旧工学部1階本館大会議室
国際シンポジウム 「大学と美術の可能性を求めて」
主催:科研共同研究 大学における「アート・リソース」の活用に関する総合的研究
22日 GALLERY SOAP
「LANDSCAPE HOTEL ASIA 2016」
ピシタクン・クアンタレーンク(タイ)
ユ・ギュオ(中国)
ヒ・リピン(中国)
29日 糸島国際芸術祭2016 糸島芸農
「発酵する地平」
糸島二丈松末地区の複数会場
30日 福岡アジア美術館
「インド現代デザインの行方 Work Progress for Better Tomorrow」
話し手:イシャン・コースラさん
聞き手などの詳細は、こちら。
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注)掲載している画像や文章の中には、特別に許可をいただいているものもあります。内容の無断転載及び複製等の行為はご遠慮ください。
*福岡市美術館の「休館中」の文言を「2019年3月21日リニューアルオープン」に書き換えました。
*北九州市立美術館から「一部休館中」の文言をはずしました。
*最終更新:2018年10月