草間 彌生 ≪南瓜≫ 福岡市美術館蔵 |
改修工事のため2016年9月から約2年半にわたり休館する福岡市美術館(以下、市美)。8月は2度足を運びました。
おそらく幼少の頃からも含めると、博物館・美術館の中でこれまで筆者が最も多く訪れている市美。9日に館内のカフェで開かれた「学芸員とともに美術館への思いを語りあいましょう」というイベントの参加をきっかけに、印象に残っていることを振り返ってみました。
憶ひでのポスター展 (1)
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憶ひでのポスター展 (2) |
(画像はクリックすると拡大します。他館へ巡回したものも含めて、ぜひあなたが観に行った展覧会を探してみてください)
(≪銀の雲≫をご覧になったことがない方はぜひインターネットで検索してみて下さい。市美以外でも国内の展示歴はあるようです。)
また、「近代風景画の巨匠 吉田博展 清新と叙情」(1996年)では、吉田博という作家を初めて知り、彼が描く色彩、特に川の水色に魅了されました。どうしたらこんな色が作れるのだろう、どうやったらこんなに勢いよく流れる水が表現できるのだろうと目を凝らして鑑賞しました。
ほかにも、学外授業で行った「ポンペイの壁画」(1997年)、真夏の暑い日に美術館の空調の心地よさが身にしみた「大竹伸朗展 -路上のニュー宇宙」 (2007年)、地元にはめったに来ないルネサンス期の作品に心奪われ、先に観終わったお友達を長いこと待たせてしまった「レオナルド・ダ・ヴィンチ美の理想」(2012年)、福岡のアートシーンを振り返った「福岡現代美術クロニクル1970-2000」(2013年、福岡県立美術館との共働展)、学生時代お世話になった先生やお友達の個展、グループ展なども挙げ始めるとキリがありません。
李 禹煥(リー・ウーファン) ≪関係項≫ 福岡市美術館蔵 |
ある時はとても賑やかで、またある時は静まり返った市美。
常設展示も大好きです。
いつ来ても来館者を静かに出迎えてくれるジョージ・シーガルの≪次の出発≫。作品名はとてもポジティブですが、ゲートをくぐろうとする3人の人物の表情からは、違う心境を見て取れるような気がするの筆者だけでしょうか。その時の気持ちによって見え方が全然違います。また、2階の常設展示室入口のアニッシュ・カプーアの立体作品≪虚ろな母≫は、その前にたたずむ度にまじまじとのぞき込んでしまいます。不思議と吸い込まれるような濃く青い色。いつも作品の一番奥まで手を伸ばしたい衝動にかられます。
同じ8月に直島でも観た草間彌生の≪南瓜≫、常設展示室(近現代美術)の壁をまるごとひとつ独占しているラファエル・コランの≪海辺にて≫、購入した当時大変話題になったと学校の先生が教えてくれたサルバドール・ダリの≪ポルト・リガロの聖母≫、いつもの市美。みんな大好き。
*市美の所蔵品については、一部ウェブサイトでも閲覧できます。⇒ こちら。
*休館中に他館で観られる市美の所蔵作品は、こちら。
残念ながら写真はありませんが、社会人になるとトークイベントなどにも足を運び始めます。急な告知だった上に開催日が平日の夜で、本当にあるのか、会場に着くまで本気で不安だったクリスト&ジャンヌ=クロードの講演会(2007年)。ジャンヌ=クロードのオレンジ色に染めたヘアスタイルと講演会後のサインの長蛇の列が今でも忘れられません。
*現在開催中(2016年12月4日まで)
「クリストとジャンヌ=クロード アンブレラ 日本=アメリカ合衆国 1984-91」
水戸芸術館 (茨城県水戸市)
クロージング/リニューアル特別企画展
「歴史する!Doing history!」 ポスター
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「歴史する!Doing history!」
ポスターにそっくりの服装の監視員さん
(コレ、私服だそうです) |
それから、この美術館にはめずらしいことに常設展示スペース内(2階)にお手洗いがあるんです。作品の維持のために一定の室温・湿度に年中保たれている美術館。その時の季節や服装によっては寒く感じることもあります。ずいぶん前に東京(六本木)の森美術館に行った時も、順路のちょうど中腹くらいに設置されていてホッとしたお手洗い。女の子には嬉しい設備です。
そして旅行などで建築家(前川國男)が同じである東京都美術館や熊本県立美術館に足を運んでも、ついつい市美のおもかげを探してしまいます。
写真提供:御笹朋子さん |
写真提供:御笹朋子さん |
写真は、8月3日から7日に開催された 『えがこう!大濠公園のカタチ』夏休みこどももおとなも美術館2016(ステンシルワークショップ)の様子。以下は、写真提供の際にアーティストでもあり、このワークショップの協力者でもある御笹(みささ)朋子さんが寄せて下さったコメントです。
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私はステンシルの型を作るための原画を描かせてもらいました。市美の彫刻、仏像、古美術品、大濠公園のベンチや街灯、ジョギング・散歩している人などリサーチして描いたオリジナル原画計25種とそれを元にA4サイズのステンシル型25枚を作成。
一般参加ワークショップの前日に、原画コピーとA3サイズのクリアファイルを使って拡大バージョンのステンシル型25枚の切り抜き作業を、館のスタッフ・大人の方数名にお手伝いしてもらいました。
アクリル絵の具とスポンジと型を使って窓にステンシル、一週間のワークショップでは、子どもから大人まで800人近くの参加者があったそうです。その後市美閉館まで展示されていた窓に映るステンシルは、とても色鮮やかで豊かな表情でしたね。
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ワークショップ後の展示風景 |
筆者がワークショップ後の様子を撮影したのは夕刻時。ステンシルによって転写された南瓜や大濠公園をジョギングする人たちの影が床にはっきり写って、カラフルなガラス窓がいっそう賑やかに見えました。
リニューアル休館前の最後の開館日、夜は盆踊り大会も開かれました。
写真は開催前の準備の様子。
2階屋外 (エスプラナード) |
最後に。ぜひ筆者がオススメしたいのが、年に4回発行される市美の季刊誌「エスプラナード」。「エスプラナード」は数年前にサイズやデザインが一新されて、個人的に毎回の発行を楽しみにしているフリーペーパーのひとつです。学芸員さんはもちろん、市美やこの季刊誌に携わる方々の“市美♥愛”がこれでもかっ!と言うくらい毎回ぎゅーっ!!と詰まっています。また、毎月1回、学芸員さんのおはなしが聞けるつきなみ講座。休館中もエスプラナードはこれまでどおり発行、つきなみ講座も福岡市内のほかの文化施設に場所を移して開催されるようです。休館中の美術館の活動などについてはFacebookでも紹介されています。
*福岡市美術館のFacebookページは、こちら。
*「エスプラナード」は福岡県内の美術館や博物館、また福岡市内のおもな文化施設やギャラリーなどにはだいたい設置されています。
季刊誌 エスプラナード 185号 (中央) |
リニューアルオープンは2019年3月(予定)。どんなふうに生まれ変わるのか、休館中の催しも含めて今からとっても楽しみにしています。それまでしばらくお別れです。
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2016年8月の記録
6日 九州産業大学
九産大建築レクチャーシリーズ Vol.23
「建築とアート」
おはなし:川俣 正さん
瀬戸内国際芸術祭2010の参加作家でもあった川俣さん。
お盆明けに予定していた瀬戸芸行きの良い予習になりました。
9日 福岡市美術館
クロージング/リニューアル特別企画展
「歴史する!Doing history!」
*今もなお更新中の展覧会の公式サイトは、こちら。
クロージング/リニューアル特別企画展
「歴史する!」関連トーク企画 対話する!dialogue
-学芸員とともに美術館への思いを語りあいましょう-
13日 福岡アジア美術館
「おいでよ!絵本ミュージアム2016」
14日 WALD ART STUDIO (ヴァルト アート スタジオ)
小畑 佑也 展
16日 [瀬戸内国際芸術祭2016 夏会期] 犬島
17日 [瀬戸内国際芸術祭2016 夏会期] 直島
18日 [瀬戸内国際芸術祭2016 夏会期] 女木島
[瀬戸内国際芸術祭2016 夏会期] 男木島
[瀬戸内国際芸術祭2016 夏会期] 高松
19日 [瀬戸内国際芸術祭2016 夏会期] 豊島
20日 [瀬戸内国際芸術祭2016 夏会期] 宇野、直島ゲストハウスくるむ
*16~20日のリンクは当ブログの記事です。
25日 福岡アジア美術館
「日本・フィリピン国交正常化60周年記念
タイム・トラベルー美術で知るフィリピン」
会期:2016年12月25日まで
27日 三菱地所アルティアム (天神イムズ 8F)
「安野光雅のふしぎな絵本展」
B2Fイムズプラザ
IMS SUMMER 2016 ~三菱地所アルティアム連動企画~
「安野光雅のふしぎな広場」
31日 福岡市美術館
リニューアル休館前の最後の日
クロージング/リニューアル特別企画展
「歴史する!Doing history!」
常設企画展
「This Is Our Collection/これがわたしたちのコレクション」
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*最終更新:2016年11月